卵巣がん

卵巣癌の化学療法で使われる抗がん剤の副作用などについて紹介しているページです。

卵巣がん病期別の治療方法

卵巣癌の進行程度は、ステージⅠAからステージⅣBまで分けられます。治療方法は、病期をある一定の参考として決定されます。ただし、患者さんの年齢や体力、希望する治療方針なども合わせて担当医と相談しながら決めていくものとなります。

■I期(卵巣もしくは卵管内限局発育)

卵巣がんはなかなか早期発見されにくく、発見された場合にはある程度病気が進行してしまう場合も少なくありません。幸運にも早期で発見された場合には、1期であれば手術を初回治療に行い、できる限り顔を摘出します。外科手術は、基本的に回復手術が標準治療。腫瘍が全摘出できなくても、腫瘍をできる限り取り除く主要原料術や、病気を決定するための腹水細胞診や腹膜生検などのために回復手術が行われる場合もあります。

■Ⅱ期(腫瘍が骨盤内へ進展したものもしくは原発性腹膜がん)

がんの腫瘍が卵巣や卵管に明らかに認められ、骨盤内にも広がっているケースや、原発性腹膜がんの場合には、手術でできる限りがん細胞を取り除き、術後に化学療法を行います。

もしも手術で取りきれなかった腫瘍の大きさが1cm以上の場合には、化学療法を行ったのち、再度手術で腫瘍を取り除く治療が選択されます。

■Ⅲ期(腫瘍が卵巣もしくは卵管に存在or原発性腹膜がんで骨盤外は種や後腹膜転移がある)

卵巣がんの中でも、骨盤の外までがんが広がっていたり、腹膜播種が見られるもの、後腹膜リンパ節に転移が見られるものはステージⅢに分類されます。

基本的な治療方針はステージⅡと同様です。

初回の手術をする前に、腫瘍を小さくするために細胞障害性抗がん剤を使った化学療法で腫瘍を小さくできないかトライすることもあります。

■Ⅳ期(腹膜は種を除く遠隔転移が見られるもの)

がんが遠隔転移してしまったⅣ期の卵巣がんの場合、Ⅱ〜Ⅲ期と同様に化学療法と手術を行うこともできます。ただし、全身状態が悪化して、手術を行うのが難しいと判断されるケースでは、術前に化学療法を行って経過を見ながら手術のタイミングを判断します。

再発した場合の痛みの緩和や、脳に転移している場合の症状緩和を目的として放射線治療が用いられることもあります。

出典: 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん|治療」

卵巣癌に使われる抗がん剤の副作用とは

抗がん剤が効きやすいとされ、治療効果も向上している卵巣癌ですが、抗がん剤を使うと副作用があると報告されています。しかし、治療においてⅠa期以外では、必ず抗がん剤治療が必要となります。特に、抗がん剤の「シスプラチン」は手術不能な進行癌でも効果が期待でき、併用・単独で広く使われています。

卵巣癌の治療法

一般的な療法としては、ドキソルビシン&シクロホスファミド&シスプラチンを組み合わせた「CAP療法」が挙げられます。

その他の療法も含めて、一覧でチェックしてみてください。

  • CAP療法:ドキソルビシン&シクロホスファミド&シスプラチン
  • CP療法:シスプラチン&シクロホスファミド
  • EP療法:シスプラチン&エトポシド
  • JP療法:シスプラチン&カルボプラチン
  • TP療法:シスプラチン&パクリタキセル
  • TJ療法:カルボプラチン&パクリタキセル

卵巣癌は比較的発症年齢が低く、再発する可能性が高い癌と言えます。こういった治療を続けていると、抗がん剤はだんだんと効かなってくるため、そのときに使われる薬として「ドキシル」(再発型の卵巣癌を追加適応として2009年に承認)が挙げられます。

それでは以下に、上記で挙げた主な抗がん剤について、特徴と副作用を紹介していきます。

シスプラチン

シスプラチンとパクリタキセルを組み合わせたTJ療法は、卵巣がんなど婦人科のがんの化学療法として採用されることが多い化学療法である。

抗がん剤・シスプラチンの薬理作用は、薬の成分含まれているプラチナ(白金)がDNAと結合し、がん細胞の増殖を食い止めるというもの。卵巣がん以外にも、膀胱がんや前立腺がん、子宮頸がん、胃がん、胆道がんなど幅広いがんに適応されている。

製品名としては、「プリプラチン注」や「ランダ注」といった注射薬が代表例である。

婦人科がんの治療方法はがんの種類や進行度によって異なるが,手術療法,化学療法および放射線療法が単独あるいは併用して実施されている.そのうち, TJ(カルボプラチン/パクリタキセル)またはTP(シスプラチン/パクリタキセル)化学療法が婦人科がん治療の中心である

出典:(PDF)『癌化学療法に関わる薬剤師の役割-質の高い情報提供の試み-』医療薬学,31(11),2005 [PDF]

シスプラチンががん治療に使われてきた歴史は古く、開発されたのは1970年代のこと。シスプラチンと構造が似ているカルボプラチンは、シスプラチン特有の副作用を軽減させたプラチナ系の抗がん剤である。ただ、カルボプラチンとシスプラチンの有効性を比較したところ、シスプラチンのほうが有効性が高い可能性を示す研究も報告されている。

シスプラチンは 1970 年代に開発され、抗がん剤として臨床使用が開始された。同時に、腎毒性、悪心などの従来の抗がん剤とは異なる特異的な副作用が問題となり、その予防法が試されてきた。そして、腎毒性に対して大量輸液や利尿薬の投与、悪心に対してはセロトニン受容体拮抗薬やステロイドの投与による副作用予防法が考案された。1980 年代半ばにシスプラチンの構造類似体であるカルボプラチンが承認された。腎毒性などを殆ど示さないことを特徴としており、シスプラチン特有の副作用を抑えたプラチナ系抗がん剤として使用されている。

出典:(PDF)『プラチナ系抗がん剤のがん・腎臓移行を決定する分子機構』Drug Delivery System,27(5),2012 [PDF]

出典: 国立がん研究センターHP『がん情報サービス|がんの治療に使われる主な薬|シスプラチン:注射』

主な副作用
激しい副作用が特徴で、特に深刻なのが腎不全をはじめとする腎臓機能障害。また、吐き気や嘔吐、食欲不振といった消化器症状も強く現われ、主に制吐剤の併用などで対処する。骨髄抑制など重篤な副作用が出る場合もあり、投与に際しては検査を行ないながら十分観察する必要がある。こういった副作用の軽減を目的として同じ研究者により開発されたのが「カルボプラチン」「ネダプラチン」。腎機能がダウンしている時や副作用に耐えられない時などにも投与できるケースがあり、シスプラチンの代わりに用いられる場合もある。

シクロホスファミド

概要

卵巣がんだけでなく、多くのがんに適応する抗がん剤として広く用いられているシクロホスファミドは、穏やかな効果が期待できる抗がん剤。そのため、大量療法や多剤併用による抗がん剤治療でも使われるケースが多い。

シクロホスファミドには飲み薬と注射、2つのタイプがあり、「エンドキサン」などがそれにあたる。卵巣がんの治療では、ドキソルビシンの投与と合わせて行うAC療法、メソトレキサートや5-FUとともに行うCMF療法などで用いられる。

卵巣がん以外にも、子宮体がんや子宮頸がん、胃がん、膵臓がん、肝細胞がんなどに使われている。抗がん剤のタイプとしては、細胞障害薬というタイプの中でもアルキル化剤と呼ばれるグループに分類される。

DNAと結合して細胞分裂をストップさせ、がん細胞の増殖を抑える薬理作用を持つ。

シクロホスファミドとイホスファミドは広く用いられているアルキル化薬であり,P450によって主に肝臓において4-水酸化体へと代謝される。4-水酸化体は開還し,生じたホスフォラミドマスタードとアクロレインが抗がん活性を有する薬効本体である

出典:(PDF)『癌の遺伝子治療とチトクロムP450』薬物動態,14(6),1999 [PDF]

主な副作用
吐き気や嘔吐、発熱をはじめ、骨髄抑制や出血性膀胱炎、脱毛といった症状が挙げられる。脱毛に関しては、治療を終えて投与を止めれば自然回復する。また、男性の場合は精子生産停止、女性の場合は無月経になる可能性もある。さらに長期・大量投与によって、動機・息切れ・めまいが起こったり、骨髄抑制が増強する場合もある。

ドキソルビシン

概要
代表的な抗がん剤のひとつであり、抗がん性抗生物質の最も代表的なもの。癌細胞のDNA合成を妨げる作用や、DNAを切断し癌細胞を殺す作用がある。

上記でご紹介した、シクロホスファミドと合わせて用いられるAC療法の抗がん剤。適応となるのは卵巣がんのみで、細胞のDNAやRNAが合成できないように作用する抗悪性腫瘍薬に分類される。アントラサイクリン系の抗生物質を含み、抗がん剤として承認されたのは、2007年のこと。成分には大豆由来の添加物が使用されているため、大豆アレルギーのある方は使用時に注意が必要。

出典: 国立がん研究センターHP『がん情報サービス|がんの治療に使われる主な薬|ドキソルビシン:注射(リポソーム)』

 

治療現場でも多く用いられているドキソルビシンだが、多剤耐性を示すことが課題となっている。近年の研究では、その課題を克服する方法の一つとして、免疫機能を増強させる作用や、血液幹細胞を増加させる作用を持つセファランチンと呼ばれる薬がドキソルビシンの作用を高めることがわかっている。

アントラサイクリン系抗生物質のドキソルビシンは強力な制癌薬として臨床に繁用されるが,多剤耐性の出現は眼科治療における大きな問題になっている。〜中略〜先に著者らは,セファランチンがドキソルビシンの耐性を改善し,ドキソルビシンの殺細胞作用を著しく高め,その抗腫瘍作用も強めることを報告した。

出典:(PDF)『ドキンルビシン耐性に対するセファランチン効果のフローサイトメトリーによる解析』薬学雑誌,112(11),1999 [PDF]

卵巣がん治療では、塩酸ドキソルビシンを使った化学療法は、1980年代にはプラチナ系抗がん剤を使った治療と並んでポピュラーだったものの、徐々に卵巣がんの初回治療としては使われなくなっていた。ところが、近年再発卵巣がんの治療にドキシルビ新を使った治療の有効性も報告されている。

再発卵巣癌に対するドキシル®の臨床的有用性を決定付けた試験は、欧米を中心に registrationstudy(開発治験)として実施されたランダム化比較試験(臨床第Ⅲ相試験)である10,11)。白金製剤を含む初回化学療法が無効の卵巣癌患者 474 例を対象に、ドキシル®(50mg/m2 の 1 時間点滴静注、4 週間隔)とサルベージ治療における選択肢の 1 つとされるトポイソメラーゼ I 阻害薬(トポテカン:1.5mg/m2/ 日の 30 分間点滴静注、5 日間連日投与、3 週間隔)との有効性及び安全性を比較した結果、主要評価項目である無増悪生存期間(progression freesurvival;PFS)は、統計学的な有意差はないものの(p=0.095)、ドキシル®投与群で良好であった

出典:(PDF)『ドキシル®の開発経緯』Drug Delivery System,28(3),2013 [PDF]

主な副作用
吐き気や嘔吐が発生する頻度が比較的高く、脱毛や骨髄抑制が発生しやすい薬剤でもある。心臓への障害が起きやすいという点も特徴として挙げられ、総投与量が多ければ多いほど、その発生頻度や重症度も上がる。

エトポシド

概要

エトポシドは、北米が原産地のアメリカミヤオソウの根茎に含有される「ポドフィロトキシン」の誘導体を使っている抗がん剤。細胞障害薬の中でも、「トポイソメラーゼ阻害薬」と呼ばれるタイプに分類され、DNAを合成する際に必要とする酵素の働きを邪魔することで、がん細胞が増殖するのを防いでくれる薬である。

適応がんは、卵巣がんに加えて、肺がんや、子宮頸がん、悪性リンパ腫。カプセル錠と注射の2タイプの投与方法がある。

なお、エトポシドには骨髄抑制や間質系肺炎などが副作用として報告されている。服用後はこうした副作用に注意が必要である。

エトポシドは幅広い抗腫瘍活性を持つ抗がん剤で白血病を代表とする多くの悪性腫瘍で使用されているが、多くの関係因子がその薬動力学に影響を及ぼすと考えられている。エトポシドは細胞膜のトランスポーターでMDRI遺伝子の産物であるP糖蛋白の気質として知られており、P糖蛋白の発言はその九州排泄に関与されていると考えられている。〜中略〜エトポシドはしばしば他の抗腫瘍剤と併用して使用されるが、臨床的にその相互作用はほとんど報告されていない。

出典:(PDF)『2. 小児リンパ性白血病患者におけるエトポシドの薬動力学と薬理遺伝学』臨床薬理,35(2),2004 [PDF]

主な副作用
貧血や骨髄抑制、食欲不振、吐き気、嘔吐といった症状がみられるほか、脱毛も発症しやすい。また、投与後まもなくアレルギー反応が出る場合があるため、注意が必要。連続投与においては、特に白血球・ヘモグロビンの減少といった骨髄抑制が起こりやすくなる。せきや発熱、呼吸困難を伴う間質性肺炎の可能性もある。

カルボプラチン

概要

DNA複製を阻害してがん細胞を死滅させる細胞障害薬という種類の抗がん剤の中でも、「シスプラチン」と同じように白金(プラチナ)を含んでいるプラチナ製剤。シスプラチンと比べても、効果はほぼ同等。逆にシスプラチンよりも毒性を軽くするものとして開発された、第二世代のプラチナ製剤である。特徴は、プラチナ製剤の中で副作用が最も軽いと言われている。

卵巣がんではありませんが、肺がんの化学療法では次のように用いられています。

カルボプラチンは,シスプラチンによる嘔気・嘔吐,腎毒性を軽減した薬剤である.シスプラチンに比べ大量補液を行わずに済むということ,外来化学療法でも簡便に使用できることから,肺癌化学療法におけるプラチナ製剤の一つとして頻用されている.カルボプラチンは制吐剤適正ガイドラインにおいて中等度催吐性リスクに位置しているが,NCCN のガイドラインでは一部の患者では高度催吐性リスクに入るということも指摘されている.4 そのためこれらのガイドラインではカルボプラチンを含む中等度催吐性リスクの薬剤に対し,アプレピタ ントの使用を推奨している.

出典:(PDF)『カルボプラチン/ペメトレキセド併用療法におけるアプレピタントの有用性の検討』肺癌,55(7),2017 [PDF]

卵巣がんでは、パクリタキセルと合わせて使われる抗がん剤であり、卵巣がんの標準治療となっている。再発時には、ゲムシタビンと呼ばれる抗がん剤とともに使用することで脱毛や末梢神経障害などの副作用の少ない治療ができないか、臨床試験も行われている。

卵巣癌治療におけるKey drugはプラチナ製剤とタキサン製剤である,パクリタキセル+カルボプラチン併用療法が頻用される。初回化学療法にはよく反応するが、約半数は再発するため,セカンドライン以下の化学療法も重要となる

出典:(PDF)『卵巣癌治療の現況と展望』杏林医会誌,44(3),2013 [PDF]

近年、カルボプラチンにはジェネリック品も登場し、治療費を抑えたい方にも嬉しい情勢となっている。ジェネリックとの効果や副作用の違いに関して調べた後ろ向き調査では、統計学的には優位な違いは見らなかったものの、長期的な視点で予後の違いを見る必要があるとされている。

当初,我々はジェネリック品が当院採用されたのち,化学療法を行っている患者から,抹消神経症状の訴え,手足のしびれ感,四肢の疼痛感の訴えが増した印象を持ったため,今回の後ろ向きの調査を行った。結果,有害事象全般では統計学的に優位ではなかったが,ジェネリック品に有害事象が多い傾向があった.〜中略〜今回の検討ではTJ療法において先発品とジェネリック品では同等の安全性を持つことが考えられたが,長期的な予後については今後も慎重に経過を見る必要がある

出典:(PDF)『カルボプラチン,パクリタキセル製剤のジェネリック品変更前後における有害事象の検討』日大医学雑誌,71(6),2012 [PDF]

主な副作用
シスプラチンに比べて軽いものの、骨髄抑制や腎障害には注意。吐き気・嘔吐も半数を超える患者にみられる。また、口内炎や下痢、便秘、腹痛、血尿、発熱、しびれといった症状が起こる場合もある。

パクリタキセル

概要
1992年、卵巣がん治療薬としてアメリカで認可され、現在は世界各国において、さまざまながん治療に使われている。

TC療法(カルボプラチン+パクリタキセル)に用いられる抗がん剤として、卵巣癌治療でも多く用いられる抗がん剤です。高齢者の場合、末梢神経障害などの副作用が強く出ることが多く、パクリタキセルの代わりにドセタキセルが用いられることもある。パクリアキセルは化学物質タキサンを含む薬で、がん細胞の細胞分裂を阻害して、がんに対抗する。

出典:(PDF) 『卵巣癌治療の現況と展望』杏林医会誌,44(3),2013[PDF]

パクリタキセルによる化学治療は、しびれ症状など末梢神経障害が起こりやすく、副作用が重い場合には神経障害の回復が完全にできず、後遺症として残ってしまうことがある。

パクリタキセル投与による末梢神経障害症状の出現率は57〜83%。末梢神経障害症状は投薬をやめれば改善されることが多いものの、注意が必要である。

がん治療の進歩によりがん患者の生命予後が延長し,患者の生活の質の改善により多くの関心が向けられるようになった.パクリタキセルは最も広く使われる抗がん薬の一つであるが,その投与に伴って通常の鎮痛薬に抵抗性の痛みを合併する末梢神経障害がしばしば生じる.パクリタキセルは固形がんに対して適応をもち,微小管に結合し重合促進・安定化をもたらし細胞分裂を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮する.パクリタキセル投与により 57~83%と高頻度に末梢神経障害症状が出現する

出典:(PDF)「『パクリタキセルのターゲットはグリア細胞』 外套細胞より供給されるL-セリンに注目した化学療法誘起末梢神経障害の機序」日本薬理学雑誌,141(2),2013 [PDF]

最近では、パクリタキセルがなぜ末梢神経障害を引き起こすのか、その貴女に対する研究が進んでいる。パクリタキセルによる治療の妨げとなりうる、服用としての末梢神経障害を軽減するための治療薬の開発は今後の進展が期待されるところである。

主な副作用
骨髄抑制や発熱、関節痛・筋肉痛、軽い吐き気・嘔吐、頭髪以外の全身的な脱毛などが現われる。また、重いアレルギー症状が投与後まもなく発症する場合があるため、アレルギー体質があるならば、あらかじめ医師に伝える必要がある。手足の痺れ・痛みなど末梢神経の障害や、ときには聴力障害やうっ血性心不全が発症する場合もある。
(※2010年7月、アレルギー予防のためのステロイド剤など、前処置を必要としないパクリタキセル注射剤が承認された)

リポソーマルドキソルビシン

概要
リボソーマルドリキソルビシンは、再発卵巣がん治療のための抗がん剤として2009年に承認された薬です。もともとは、エイズ関連カポジ肉腫適応の抗がん剤でしたが、卵巣癌では再発した際に使える薬として標準治療薬に。

リポソームという超微小カプセルに「ドキソルビシン」が閉じ込められており、マクロファージ(外敵侵入に備える白血球)に捕まることなく、癌組織の血管へ浸入する。癌組織の中で徐々に放出されるので、作用する時間が長く、脱毛や骨髄抑制、心毒性など主な副作用に関しても軽減された。

2009年7月から1年間に,化学療法で既治療の再発卵巣癌13例および腹膜癌4例に対し,ペグ化リポソーマルドキソルビシン(PLD)を使用した.1例でCR, 3例でPRが得られ,奏効率は27%(4/15)であった.いずれもPLDを2サイクル投与した時点では抗腫瘍効果が認められなかったが,3サイクル以後に抗腫瘍効果を効果が認められた.4例でSDが得られ,奏効例と併せて治療効果の得られた症例は53%(8/15)であった.

出典:『再発卵巣癌・腹膜癌に対するペグ化リポソーマルドキソルビシンの治療効果と有害事象の解析』産婦人科の進歩,63(3)2011

出典: 国立がん研究センターHP『リポソーマルドキソルビシン』

適応となるのは、卵巣がんの中でも、化学療法後に再発・憎悪した卵巣がん。リポソーマルドキソルビシンは、細胞内のDNA合成を阻害することで、たんぱく質の合成やDNA複製を食い止め、がん細胞が増えないように働きかける抗生物質(アントラサイクリン系)に属する抗がん剤である。

リポソーマルフォキソルビシンに用いられているリポソーム(超微小カプセル)は、医薬品だけでなく、近年化粧品などにも使われるようになっている。

血中滞留性の高いステルスリポソームを用いれば,EPR効果によって癌組織へ薬物を効率よく送達できると考えられる.実際に,colon26を移植し固形癌とした胆癌マウスに,ドキソルビシンを封入したステルスリポソームを投与すると,癌組織中のドキソルビシン濃度は徐々に高くなり,癌の退縮と優れた延命効果が得られた。〜中略〜ドキソルビシン封入ステルスリポソーム製剤は,米国ではDOXIL®(ヨーロッパではCAELYX®)という商品名で発売されている。DOXIL®は,水素添加大豆レシチン:コレステロール:DSPE-PEG(PEGの平均分子量1,900)=5.3:56.4:38.3(モル比)の素性からなり,70〜100nmのサイズを持つリポソームで,ドキソルビシンは総脂質重量1gに対し200mgの割合で封入されている

出典:(PDF)[PDF]

「リポソームによる癌へのパッシブターゲティング」Drug Delivery System,14(2),1999

主な副作用
口内炎・骨髄抑制・心筋障害・手足症候群、肝機能障害・肺塞栓症・間質性肺疾患などが挙げられる。

抗がん剤の副作用にはどう対処する?

使用する抗がん剤の種類によって、または個人によって、あらわれる副作用やその強さは変わります。しかし、抗がん剤治療を行う際に不安になるのは、やはり副作用ですよね。副作用には、どのような対応が行われるのでしょうか。副作用が現れるとされる時期などと共にご紹介します。

副作用があらわれる時期

抗がん剤を点滴後、24時間以内に現れるとされているのが「吐き気・嘔吐・アレルギー反応」などです。抗がん剤の副作用というと吐き気が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。使用した薬にもよりますが、投与直後はなんともなくても、数時間、数日経過してから吐き気が現れることもあります。

投与後、1週間から数週間後に現れるとされているのが「白血球、血小板等の減少」といった骨髄抑制といわれる症状、「腎機能の低下」などです。また、「手足、口のしびれ」といった末梢神経の症状が出ることもあります。

抗がん剤治療は髪の毛が抜けるといったイメージがありますが、「脱毛」は治療開始後、すぐにはじまるわけではありません。多くの場合、投与後2週間から数ヶ月後に抜け始めるようです。抜け方も個人差があり、薄毛程度のものから全部が抜け落ちる場合もあります。髪の毛が抜けるという現象は、ショックを受けてしまいますが、治療が終了すれば、髪も生えてきますし、元に戻る現象です。

副作用は個人差があります。人によっては他にも「倦怠感や貧血」「味覚障害」「体の痛み」などが現れることがあります。

副作用への対処

  • アレルギー反応

重篤な反応が現れる場合は、投与の中止や薬の変更が求められる場合があります。投与後すぐに動機や息切れ、呼吸困難といった症状が現れる場合は、すみやかに医師による判断を仰ぎます。

  • 吐き気・嘔吐

近年の薬の進化により、吐き気や嘔吐といった症状は、改善されつつあります。抗がん剤投与前に吐き気・嘔吐をおさえる薬を使用することで、人によっては全く感じない方もいます。また、多くの場合、吐き気は数日で消えることが多いです。しかし、投与された薬の効き目がきれた後に吐き気を感じる方もいますので、その場合は、気分の良いときに食事をして、脂分の多いものや乳製品を避けるなどの対応を行います。吐き気がひどく食事が全くとれないなどの場合は、医師へ相談します。

  • 白血球、血小板等の減少

白血球や血小板等の減少は、自覚することが難しい症状でもあります。白血球の減少により体の抵抗力が低下していますので、外出を避けて感染症を予防する必要があります。高熱が出るなどの症状が出た場合は、迅速に医師に相談するようにします。また、血小板の減少で血がとまりにくくなるため、怪我をしないよう注意しながら生活を送らなければいけません。

  • 腎臓機能の低下

使用する薬によって、腎臓や膀胱に影響を与える場合があります。その場合、膀胱炎のような症状や血が混じったような尿が出ることがあります。尿の量を増やすために水分を多めに取るなどの対策を行うことになります。

  • 手足、口のしびれ

抗がん剤が手足や口の神経に影響を与えることにより、しびれといった症状が現れることがあります。生活を送る上で「しびれ」という症状は、さまざまな場面で不便を強いられることがあります。物を持ったり歩いたりといったことが困難になる場合もありますので、危険なものを扱うときや外出先で転ばないような配慮が必要になります。しびれに対する対応として、漢方薬などの薬が処方されることもありますが、治療法というものがないこともあります。治療が終了するまでは、つきあわなければいけない症状でもあります。

  • 脱毛

自分の髪が抜け落ちる、ということは、誰もがショックを受ける症状です。もちろん、全ての人が抗がん剤治療で脱毛するわけではありませんし、使用する薬によって、脱毛しやすいものとそうでないものがあります。また、治療中でも髪が生えてくることもあるようです。抜け方にも個人差があり、まつげや眉毛が抜けることもあります。

脱毛の対処法としては、少しでも脱毛のショックをやわらげるため、短髪にしておくと良いとされています。髪を短くしておくことで、抜け落ちた毛を処理しやすいですし、薄毛も目立たなくなります。さらに頭皮や髪に刺激を与えないように、パーマや染毛を避け、刺激の少ないシャンプーを使用するのも良いでしょう。状態によっては、バンダナや帽子を使用します。また、かつらの着用は、気持ちの面での支えにもなります。

  • 筋肉痛・関節痛

パクリタキセルなどの抗がん剤には、副作用として関節痛や筋肉痛が生じる場合があります。症状の程度は薬の投与量や治療スケジュールにもよりますが、症状は少しずつ軽減していくため、できる限り痛みがある際には安静にして、無理をしないようにすることが大切です。場合によっては、マッサージや、風呂で体を温める、痛み止めを飲むなどの対処をするのも有効です。

がん治療中の筋肉痛や関節痛は、抗がん剤の副作用によるもの以外にも、白血球を増やすためのG-CSFという薬の副作用、さらに細菌感染によって発熱したことによる筋肉痛・関節痛の発生の可能性もあります。細菌感染による筋肉痛や関節痛の場合には、高熱を伴うケースもあり、早急に対処すことが大切です。

  • しびれ

抗がん剤による副作用に加えて、がんそのものの症状としても“しびれ”が生じる場合があります。痺れは、血行不良や神経過敏などが原因で起こる症状です。抗がん剤による化学療法は、副作用の発症頻度が高いことはよく知られている通りです。また、がんが神経を圧迫したり損傷したりした際にしびれが出ることもありますので、しびれの原因を知ることが大切です。

血行不良によるしびれであれば、緩和のためにはウォーキングや、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることが有効です。また、体に触れる衣服を柔らかい布地にしたり、締め付けのないタイプの服を選ぶと良いでしょう。場合によっては、しびれに対する薬物療法として、ビタミン剤の投与や、鎮痛剤などの投与も行われることがあります。

  • 下痢

イリノテカンやエトポシド、ドキソルビシンなど抗がん剤の中には消化管に副作用を及ぼし、下痢を引き起こす場合があります。下痢が続けば、食事を取るのも苦しくなりますし、腹痛やだるさなどが生じ、体力の低下にもつながります。また、通院でがん治療をしたいと思っている方にとって、下痢は日常生活に深刻な影響を及ぼす症状とも言えます。

下痢が副作用として出た際には、まずは脱水症にならないように水分補給を意識することが大切です。また、腸に刺激を与えないように休息を適度に取りながら、お腹を湯たんぽやカイロなどで温めると良いでしょう。食事では、脂っこいものや繊維質が多いもの、胃腸への刺激が強いアルコールやコーヒー、香辛料などは控えましょう。

もしも1日4回以上強い下痢がある場合、その症状が3日以上続く場合には一度お医者さんに相談してみてください。

出典: 国立がん研究センターHP『がん情報サービス|さまざまな症状への対応』

薬を知り医師と連携しながら治療を行うことが大切

抗がん剤は、種類により副作用が違います。使う人それぞれで副作用の現れ方も違います。抗がん剤治療を受ける前に、薬についての知識を持ってから治療を開始することが何よりも大切です。

また、病院で入院しながら治療を行う場合、副作用が現れたとしても病院で即座に対応してもらえますが、通院により治療を行う方は、自宅で副作用と向き合うことになります。その場合には、自己で対処することになりますが、心配な症状などがあれば把握しておくようにし、すぐ医師に相談するようにしましょう[1]。

抗がん剤のつらい副作用で悩むより、負担の少ない卵巣癌治療を

卵巣癌は女性特有の癌です。抗がん剤を使った治療では、個人差があるものの必ず副作用が発症してしまいます。吐き気や嘔吐といった副作用もそうですが、女性が特に気にしてしまうのは副作用による脱毛ではないでしょうか。卵巣癌は、他の部位の癌と比べて発症年齢が低いのが特徴です。薬の影響で髪が抜けてしまうというのは、若い女性にとって非常につらい副作用と言えます。

そんな抗がん剤治療で悩んでいる女性におすすめしたいのが、副作用がほとんどない新しい治療法です。今までの癌治療は外科治療や抗がん剤治療、放射線治療が一般的でした。しかし、今では遺伝子治療や免疫療法といった副作用の少ない治療法が注目を集めています。また、抗がん剤に漢方薬を合わせれば副作用が軽減できるかもしれません。次のページで詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

卵巣がんの再発にはどう対処する?

卵巣がんの再発の対処法についてご紹介します。

卵巣がんの再発率について

がん治療で患者さんやご家族の方にとって不安に感じることの一つが、一度がんが治ったとされた後の再発です。卵巣がんは、初回の治療後の再発率は、半数以上。治療完了後、2年以内に再発することが多いそうです。

卵巣癌は初回治療によく奏効するものの,半数以上の症例が再発する。再発の時期は治療後2 年以内が多く,特に進行癌(Ⅲ・Ⅳ期)では,2 年以内には約55% が,5 年以内には70% 以上が再発するとされている 1)。再発後の生存期間の中央値はおよそ2 年であり,再発後は根治が困難であることから治療の目的は初回治療と異なり,生存期間の延長およびQOL の改善や症状の緩和である 2)。

出典:『卵巣がん 治療ガイドライン』日本癌治療学会
https://jsgo.or.jp/guideline/img/ransou2015-04.pdf

そのため、再発がんに対する治療は、化学療法が取られることが多く、初回の化学療法が終わってから再発卵巣がんの治療までの期間によって、化学療法が効く確率も変わります。

一般的に、卵巣癌の化学療法が終了してから、再発するまでの期間が6か月以内の場合には、プラチナ製剤に対する抵抗性があることから奏効率は10%以下。逆に再発がんの治療開始までの期間が1年以上経っていれば、奏効率は44084%ほどに高まります。

こうした要因から、再発卵巣がんの治療は、どのタイミングで再発するのか、そして再発がんへの治療を開始するのかが、予後に大きく影響すると考えられます。

再発卵巣がん治療の方法0化学治療0

再発した卵巣がんの治療は、放射線治療ではなく抗がん剤を使った化学療法が基本となります。

6ヶ月未満で再発した場合には、イリノテカンやゲムビタビン、トポテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、リポソーム化ドキソルビシンなどの抗がん剤を単剤で使用し治療します。

また、保険適用外ではありますが、毎週のパクリタキセルによる投与は奏功率が高い化学療法として報告されています。

また、再発までの期間が6か月以上経っている再発卵巣がんに対しては、プラチナ製剤を含む多剤併用療法がガイドラインでは推奨されています。 再発卵巣がんに対する多剤併用療法には「TC療法」「GC療法」「PLD-C 療法」などがあります。

ただし、これらの薬剤のどれがどういった風に作用を表すかは人によっても異なると考えられます。また、今の所、再発した卵巣がんに対して、これといった効果を示す薬剤が見つかっていないのも現状です。今後の研究が進むのが待たれるところです。

再発卵巣がん治療の方法0放射線治療0

放射線治療もがん症状を緩和するために採用されることもあります。例えば出血や痛みといった症状の緩和に、放射線治療は有効とガイドラインにも記されています。

再発までの期間が短く、プラチナ製剤系の抗がん剤に対して抵抗性ができている場合でも、放射線治療は有効であると言われています。

再発卵巣がん治療の方法0外科的治療0

難治性とも言われる再発性卵巣がんですが、初回手術の状況や再発時期などによっては、腫瘍の完全切除を目指して外科手術を用いることがあります。再発に対する外科手術をする条件は、ガイドラインでは次のように記載されています。

  • 再発までの期間が少なくとも6か月あること

若い世代で発症すれば、将来の子宮温存なども考えたい卵巣がん。とはいえ、卵巣がんは腫瘍がかなり大きくなるまで無症状のことも多いと言われています。早期発見につなげるためにも、下腹部にしこりがある、お腹が張る、トイレが近いなどの症状がある場合、その他の腹部に異変を感じた場合には、速やかに病院に受診しましょう[2]。

【参考URL】

参考[1]:『もっと知ってほしい卵巣癌のこと』NPO法人キャンサーネットジャパン
http://www.mbs.jp/joc/pdf/01.pdf

参考[2]:『卵巣がん 治療ガイドライン』日本癌治療学会
https://jsgo.or.jp/guideline/img/ransou2015-04.pdf