膵臓がん

すい臓がんの治療において用いられる抗がん剤(ジェムザール(塩酸ゲムシタビン))について、その概要や副作用を調べた情報を紹介しています。

膵臓がん病期別の治療方法

膵臓がんの病期は、日本膵臓学会と国際基準(UICC分類)で定義が少しずつ異なります。現在、日本ではどちらの基準も用いられています。ここでは日本膵臓学会の病期の定義に基づいて治療方法について病期別に見ていきましょう。

■I期(領域リンパ節への転移がなく、膵臓内に限局している膵臓がん)

腫瘍が膵臓の外まで広がっていなく、リンパ節への転移も見られない場合には病期はⅠ期に分類されます。治療法は、切除可能な場合が多く外科手術で腫瘍を切除する治療が標準治療となります。腫瘍の広がりや患者さんの体力、その他の病期の有無などを総合的に考えて、外科手術前に補助療法として化学療法や放射線治療などが用いられることもあります。多くの場合で、手術プラス薬物療法の組み合わせが選択されます。

■Ⅱ期(リンパ節への転移があってもががんが腹腔動脈や上腸冠動脈には広がっていない膵臓がん)

病期がⅡ期と膵臓がんのうち、腫瘍が切除可能もしくは主要な血管にがんが広がっていても遠隔転移が見られない場合には外科手術で腫瘍を取り除く治療法が選択されます。手術で膵臓がんを取り除けた場合でも、再発リスクを減らしたり、生存期間を延ばしたりする目的で薬物療法が行われます。手術後の薬物治療はゲムシタビン単剤治療やテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤単剤療法などが一般的です。

■Ⅲ期(がんが腹腔動脈or上腸間膜動脈に広がっている膵臓がん)

病期がⅢ期と診断された膵臓がんの場合、腫瘍が切除不能なケースと腫瘍血管に広がっているため全ては取り除けないもののがんを小さくするなどの目的で切除できるケース(切除可能境界)に分かれます。

切除可能境界にある膵臓がんは、抗がん剤治療で腫瘍をある程度小さくしてから外科手術で腫瘍を取り除き、その後再度抗がん剤治療で再発リスクを低下させます。

また、切除できないと診断された場合には化学放射線療法や化学療法(抗がん剤治療など)が選択されます。化学放射線療法では、FOLFIRINOX療法、ゲムシタビン(ジェムザール)+ナブパクリタキセル(アブラキサン)併用療法、ゲムシタビン単剤治療などの化学療法が選択されます。

■Ⅳ期(離れた臓器に転移している膵臓がん)

がん腫瘍が切除できない範囲まで広がり、離れた臓器まで遠隔転移している膵臓がんはⅣ期に分類されます。この場合、標準治療は化学療法となり、ゲムシタビンやエルロチニブ(タルセバ)などを使った抗がん剤治療が行われます。

全身状態などに応じて緩和療法や放射線治療なども選択されます。

出典: 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん|治療」

膵臓がんに使われる抗がん剤の副作用とは

抗がん剤が効きづらいとされる「すい臓がん」ですが、抗がん剤治療によって生存率を伸ばすことはできます。ただ、副作用もあるので注意が必要です。

すい臓がんの治療法

膵臓がんの化学療法では「ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)」が使われます。この抗がん剤は、週1回の点滴で済むため、外来で治療できるのが特徴です。

ジェムザールは、2001年に承認された薬剤で、従来の抗がん剤と比較しても、大きく生存率がアップしました。ほかにも、2006年からは服用タイプの抗がん剤も承認されており、徐々に使われるようになっています。

それでは以下に、抗がん剤「ジェムザール」について、特徴と副作用を紹介していきます。

ジェムザール

概要
優れた抗がん作用がありながら、軽度の副作用で済むとされており、最も注目される抗がん剤のひとつ。

主な副作用
一般的なものとして挙げられる症状には、吐き気や嘔吐、骨髄抑制、口内炎など消化器症状がある。また、発疹をはじめとした過敏症や発熱、頻脈、めまいや頭痛、脱毛等が現れる場合もある。比較的軽い副作用のケースが多いものの、著しい骨髄抑制など深刻な副作用が出ることもあるため注意が必要。他には、アナフィラキシー症状や間質性肺炎、心筋梗塞、肺水腫、うっ血性心不全、腎不全といったものが報告されている。

ジェムザールによる副作用の種類と発現率

膵臓がんのための抗がん剤である「ジェムザール」の説明書には、使用によって発現した副作用と、その発現率についての記載もあります。すい臓がんの抗癌剤治療を始める前に、どのような症状が現れる可能性があるのか、特に症状が重くなる重大な副作用に関して知っておきましょう。

骨髄抑制 白血球減少 72.6%
好中球減少 69.2%
血小板減少 41.4%
ヘモグロビン減少 66.5%
間質性肺炎 1.0%
アナフィラキシー 0.2%
心筋梗塞 0.2%
溶血性尿毒症症候群 0.2%

出典:(PDF)「ジェムザール注射用200mg ジェムザール注射用1g」独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 - 2018[PDF]

説明書に発現率が記載されていた副作用は上で示したとおりで、骨髄抑制以外の発現率はかなり低いと言えるでしょう。ただし、安全性が高いと言われている「ジェムザール」でも、次のように、抗がん剤の副作用による死亡例は確認されているため、副作用の軽さを過信することは危険です。

本剤単独投与の臨床試験における全投与例は506例であり、そのうち安全性評価対象は481例であった。これらにおいて、本剤との因果関係が完全に否定できない死亡例が、全投与例506例中9例(1.8%)に認められた。9例の死因の内訳は、腫瘍死3例、間質性肺炎2例、感染性肺炎1例、敗血症2例及び急性呼吸不全1例であった。

出典:(PDF)「ジェムザール注射用200mg ジェムザール注射用1g」独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 - 2018[PDF]

抗がん剤のつらい副作用で悩むより、負担の少ないすい臓がん治療を

すい臓がんの治療で用いられる抗がん剤「ジェムザール」は、他の抗がん剤と比べて副作用が軽いことが特徴です。しかし、まったくないわけではありません。抗がん剤によるがん治療では副作用はどうしても発症してしまうのです。症状の現れ方には個人差があり、重い副作用を発症してしまう恐れもあります。

副作用の心配を解消するには、抗がん剤に漢方薬を併用して症状を抑えるのが効果的です。また最近では、副作用がほとんどないがん治療を行っているクリニックも増え始めています。

以下のページでは、漢方薬による副作用の軽減と、遺伝子治療や免疫療法といった治療方法についてまとめました。今までのような外科手術や抗がん剤治療、放射線治療といった標準治療ではなく、こうした新しい治療法を選ぶ方も多くなっているそうです。ぜひ一度、検討してみてはいかがでしょうか。

FOLFIRINOX療法

膵臓がんの治療法の一つ、FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法は、3種類の抗がん剤(フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン)を使って治療を行う化学療法です。

治療スケジュール

治療スケジュールは、1回あたり2日間かけて行われる投薬治療を2週間ごとに実施するのが原則。身長や体重などをもとに投与量を決めて実施されます。点滴スケジュールは、オキサリプラチンを2時間ほどかけて投与した後に、イリノテカンを投与。その後フルオロウラシルを投与していくこととなります。 また、副作用に備えて、吐き気止めの点滴と内服薬が用いられます。

用いられる抗がん剤とその作用

次に、FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法で使われる薬のそれぞれの役割・作用を見てみましょう。

フルオロウラシルは、がん細胞が増殖する際のDNA合成を阻害する薬です。RNA機能を攻撃し、がん細胞が成長しないよう作用するため、がん腫瘍を小さくする役割を果たしています。FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法では、フルオロウラシルを短時間注射と持続点滴、2種類の方法で投与します。短時間注射はフルオロウラシル血中濃度を高めるための投与で、オキサリプラチンとイリノテカンの投与後、フルオロウラシルの持続点滴の前に2〜3分かけて投与します。

また、FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法の最初に投与される抗がん剤、オキサリプラチンはプラチナ成分を含む抗がん剤で、がん細胞のDNAに結合。がん細胞のDNAを歪ませて、増殖しにくくする作用を持っています。最後にイリノテカンですが、イリノテカンは細胞分裂をする際にDNAが分裂しないように働きかけます。がん細胞の分裂を止めるため、結果的にがん細胞の増殖をストップさせ、死滅させる効果が期待されています。

副作用

FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法で予想される副作用には、主に次のようなものがあります。

  • 食欲不振
  • 吐き気、嘔吐
  • 下痢
  • 便秘
  • 口内炎
  • 発熱
  • 発疹
  • 疲労感
  • 脱毛
  • 手足症候群
  • 抹消神経障害
  • 脱毛

このほかにも、自覚症状はないものの白血球や赤血球・血小板の減少、肝機能障害、腎機能障害などが現れることがあります。 脱毛は治療開始から約3週間後から、その他の副作用は点滴をしてから1週間程度から現れ始めます[1]。

アブラキサンとゲムシタビンの併用療法

アブラキサン(ナブパクリタキセル)は、膵臓がん化学療法の中でも、生存率を上昇させる薬として注目されている薬です。膵臓がん以外にも、肺がんや胃がん、乳がんの治療に用いられています。ゲムシタビンと併用して用いることで、ジェムザール(ゲムシタビン)のみを使った化学療法よりも生存期間を伸ばすと報告されています。

治療スケジュール

アブラキサンとゲムシタビンの併用療法は、4週間を1クールとしておこなわれます。1日目、8日目、15日目に点滴でアブラキサンを投与します。点滴時間は、アブラキサン点滴が約30分、ゲムシタビン点滴が約30分です。

用いられる抗がん剤とその作用

アブラキサンは、パクリタキセルという抗がん剤を有効成分に持つ薬です。投与方法は、点滴で、がん細胞に働きかけてがん細胞の分裂をストップさせ、細胞の増殖を抑えます。 また、ゲムシタビンは世界中で広くつかわれている抗がん剤で、代謝拮抗剤と呼ばれるタイプの薬です。

副作用

アブラキサンによる副作用としては、自覚症状があるものとして次のようなものが挙げられます。

  • 関節や筋肉の痛み
  • 手足のしびれ
  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲不振
  • 脱毛

また、自覚症状のない副作用として、白血球や血小板の減少・貧血といった骨髄抑制が現れることがあります。また、あまり起こらないものの間質性肺炎や黄斑浮腫、感染症なども副作用として出る場合があります[2]。

TS-1療法

TS-1療法は、TS-1という飲み薬を用いた治療方法です。FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法や、アブラキサンとジェムザールの併用療法が受けられない場合の選択肢として考えられる治療方法です。

治療スケジュール

内服薬を1日2回朝晩に4週間続けて内服します。その後、2週間休み1クールとなります。

用いられる抗がん剤とその作用

TS-1は、比較的世界中で広く使われている、フルオロウラシルという抗がん剤の治療効果を高める薬です。副作用を軽減するために開発されました。 成分には、抗がん作用を発揮するテガフール、フルオロウラシルの分解を抑えて効果を長持ちさせるギメラシル、消化器系の副作用を軽減させるオテラシルが配合されています。

副作用

TS-1療法の副作用としては、次のようなものがあります。

  • 食欲不振
  • 吐き気、嘔吐
  • 下痢
  • 口内炎
  • 色素沈着
  • 発疹

このほかに自覚症状がない副作用として、赤血球や白血球・血小板の減少や肝機能低下がみられることがあります[3]。

【参考URL】

参考[1]:『FOLFIRINOX療法を受けられる患者さんへ』国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科監修 2014
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/pdf/FOLFILNOX.pdf

参考[2]:『アブラキサン+ゲムシタビン 併用療法を受けられる方へ 治療の手引き』大鵬薬品工業株式会社,2014
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/50.pdf

参考[3]:『ティーエスワンⓇ を服用される患者さんへ』国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科監修 2008
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/pdf/TS-1.pdf